結婚式の日に裏切られた花嫁は、新しい恋に戸惑いを隠せない
「俺の子どもを生んでくれたんだ」
「はい」
湊斗は黙っていたことを責めるどころか、これまで見たこともないような笑顔を浮かべた。
「うれしすぎて、東原に聞いた瞬間、夜遅い時間なのに会いに来ようとしたくらいだ」
湊斗の言葉は、なによりうれしい。
「生んでくれてありがとう。たしか名前は、海里だったかな」
「そうです」
「いい名だ」
湊斗は嬉しそうにしていても、疲れがにじみ出ている。今日ここに来るために、無理を重ねてはいないだろうか。
彩奈は秘書をしていたころの記憶から、そんなことまで気になった。
「これまで、どこにいたんだ?」
「誠子さんに助けていただいて、琵琶湖の近くに」
「よく無事で……」
それからは湊斗も言葉が続かないようだ。
お互いに何から話せばいいか、何を知ってほしいのか、あまりにもたくさんの出来事がありすぎる。
「海里の顔を見たい。会わせてもらえないか? 父親として」
湊斗の切実な声に応えたいと、彩奈は思った。
「今、お昼寝していますけど、起こしましょうか」
「いや、かわいそうだ。起きるまで待っていてもいいかな」
そんな話をしていたら、ノックが聞こえた。
「ごめんなさい。ここに海里が来ていないかしら」
慌てた様子の母が顔を見せた。