隠れ美少女とクール系男子
 だが、彼は幸いなことに詳しく聞いてこなかった。

 というか、裏切られる前に自分から離れるなんて、この学校に来た意味ないじゃないか。克服するために来たのに。

 彼を見ると手に菓子パンを持っている。



「あなたこそ、何しに来たんですか?」

「飯食いに」



 そうして彼は私の隣に座った。
 
 ……こいつ、人間嫌いじゃないのか? でも、あの目は本当に怖がっていた。

 とにかく、わたしはなるべく距離を開けようとベンチの端へ移動し座りなおした。

 別の場所へ移動すればいい話だが、ここは日当たりがよく気持ちがいい。個人的に離れたくなかったのだ。



「お前、変だよな」

「はぁ?」

「俺が近づいただけで女子がうるせぇのに、お前は悲鳴もしない。むしろ遠ざかっていく」

「……」



 やっぱりナルシストか、こいつ?

 距離を開けてベンチに座っている彼は呑気に手に持っていた菓子パンをほおばっている。
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