王子と姫の溺れる愛
姫坂 勇雄
ずっと、俺は芽梨の一番だった。

20年前に生まれたその日から、ずっと傍で守ってきたから。

俺と芽梨の両親は、互いに大学卒業と同時に結婚した。
しかしなかなか子どもが出来なくて、母さんはかなりのプレッシャーをかけられていたらしい。

亡くなった先代の会長・祖父は厳格で、母さんに“男を産め”とかなりのプレッシャーをかけていた。

親父と母さんは、長い不妊治療の末……
7年かけて、やっと俺を妊娠した。

しかも男が生まれたので、俺はかなり可愛がられてきた。
確かに跡継ぎとしてのプレッシャーはあったが、それよりも親父と母さんが愛してくれたので、俺は二人の息子に生まれたことが誇りだった。

そして中学二年の秋。

『勇雄、大切なお話があるの!』
母さんが微笑み、俺に報告してきた。

『ママね、妊娠したの!』と。

その時母さんは、44歳。
正直、心配だった。

無事に産めるのかが。

でも、母さんはみんなに守られながら、無事に女の子を生んだ。

初めて芽梨に会って抱いた時の感動を、俺は今でも忘れない。

小さくて、柔らかくて、温かくて……
まだ見えてないはずなのに、俺を真っ直ぐ見上げた芽梨。

涙が止まらなかった。

芽梨はとにかく可愛くて、いつも俺を追いかけてきた。

俺のことを“兄ちゃま”と呼び、俺の姿を探していた。
毎朝学校に出掛ける俺を、泣きながら追いかけ『イヤイヤ!』と呼び止めていた。

『ごめんな。
すぐ帰ってくるからな!』

『イヤイヤ!兄ちゃま、イヤ!』

『勇雄、行って!
後は私が!』

母さんが芽梨を抱き上げ、なだめながら俺に促すのが日課だった。
そして帰ると、いつも玄関先で座って待っていた。

『兄ちゃま!』

『ただいま!』

『抱っこ!』

『ん!』

俺は、幸せだった。
芽梨がいるだけで、どんなことも乗り越えていけた。

そして、幼稚園、小学校、中学校、高校……芽梨は次第に、可愛らしさを含んだ美しい女性に成長していった。

変な友人に騙されないか、変な男に付け込まれないか……
牽制して、守る日々。

芽梨も俺を慕って、頼ってくれていた。
何かあれば、すぐに俺に相談してくれていた。

しかし大学に入学し、少し経った頃。

『兄様、相談があるの…!』

俺と芽梨の関係が、大きく変化した。


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