マーメイド・ピューラの初恋(はつこい)
マーメイド・ピューラの初恋(はつこい)
「ふ~・・・今日は青空でとっても気持ちいいわ。海はわたしのおともだち!」マーメイドのピューラは朝の光の中、海をおよぎ、いま丸っこい岩にすわったところです。
ピューラはお魚たちにとても優しい女の子です。
腰まであるすてきなロングヘアーの先はくるんっとした巻き毛。今その巻き毛が潮風にゆれています。
「わたし・・・だいすきなマーマン、プッピーのハートをつかみたい!」
マーマンというのは、マーメイドの仲間の男の子のことです。
そのときです!ピューラがつけている桜貝のネックレスがキラリ!とまぶしいぐらいに光りました。
だれかの声がきこえてきました・・・
「夢をかなえたいのね?ピューラ」。それはうっとりするほどきれいな女の人の声です。
目の前の波の中からお花で出来た服を着たおとなの女の人が現れました。
「あなたはだ~れ?」ピューラは不思議な顔をしてたずねました。
「わたしは海の妖精です。海は美しい場所。あなたのような心優しいマーメイドを守るのがわたしの仕事です。」
ピューラは言いました
「わたし、夢があります。マーマンのプッピーと恋人どうしになりたいの!」
プッピーは思いやりがあるマーマン。そして、芸術作品が大好き。変わったカタチの石や、さかさまに回る魔法の時計、空に絵をかける空中絵の具を持っています。
他のマーメイドたちは、プッピーのことを「へんなマーマンだわ」とからかうけど、ピューラは自分の世界をしっかりと持っているプッピーがカッコいいと感じています。
海の妖精は「その夢をかなえましょうね!」と明るい声で言いました。そして・・・
「方法をおしえてあげましょう」とつづけました。
「ピューラ、海の中にね、7つの宝石が眠っています。あかいろ・きいろ・むらさき・金色・白・青・みどりいろです。」
ピューラは海に向かって、真剣な表情で妖精の話をきいています。
「ピューラ、そのぜんぶを集めてね、砂浜にうめるのよ。」妖精の話を聴き逃さないように一生懸命きくピューラ。
「ピューラ、ぜんぶを1つの穴にうめてはだめよ?・・・キラキラしたあなたの髪の毛の長さのかんかくをあけて、穴を掘るのです。」
「わかりました!」とピューラは返事をし、がんぼるぞーとこころに誓いました。するとサーッと海の妖精は煙のように姿を消しました。
さっそく宝石を探しに海に入っていったピューラ。あ!?あれは?・・・キラリ!
きらりと光るものがサンゴ礁の間に見えました。それはね・・・燃える炎の色です。
さあ、なにいろの宝石かな?!
・・・そう!正解。こたえはあかいろ。まるでプッピーを好き、と想う時のピューラのハートの色のようです。
ピューラは準備していたポシェットへ赤い宝石をたいせつにしまい、また泳ぎ始めます。
海の中をきょろきょろと、ドキドキわくわくしながら宝探しをするピューラ。プッピーと仲良くなれるのね、うれしいわ!ときめく気持ちでスイスイ泳げちゃいます。
海藻がゆらゆらとピューラに手を振りあいさつしてきました。
「やあ!ピューラ。こんにちは。今日はいつもよりいっしょうけんめい泳いでいるね。どうしたの?」
「うふふ♪」ピューラは…なんだかわからないけれど、宝石のことを内緒にしておきました。
「楽しんでいるだけよ~」そう答えました。
おしゃべり中の海藻のすぐそばにキラリ!海藻に似た色の輝くものが見えたよ?
これは・・・なにいろの宝石?
...そう!だいせいかい!! みどりいろです。
ピューラはよろこんでその葉っぱのような色をした宝石をポシェットにしまいます。
(はりきりすぎて疲れちゃった...)ザブーン! ピューラはお気に入りの丸っこい岩の椅子に戻りました。
おひさまが輝き、海は鏡のように空をうつしピカピカです。気持ちいいな。わたしはマーメイドに生まれて嬉しいわ!
しばらく目を閉じ、風を感じているピューラ。胸の奥にうかんでくるのは恋するプッピーの姿です。
プッピーが空に絵をえがいているところを想像しています。
なんの絵かしら?
わー!ハートの形がいっぱい。色は・・・?
あかいろ...きいろ、むらさき、そしてまばゆい金色と、ドレスみたいな白色、この海のような青にみどりいろ!
ピューラは海へ踊るようにふたたびもぐりました。(それにしても楽しいわ。すきなひとがいるせいかしら。)
くるくる海の中で体を回し、あおむけになり少しじっとするピューラ。上をみると、太陽のしずくがこぼれるようにふりそそいでいます。
あら?輝く宝箱のような色の石が見えます?
あれは・・・なんの宝石かしら??
そうです!そのとおり。金色の宝石をピューラは手に入れました。
わ~い!やったー!マーメイドのしっぽをふってよろこぶピューラ。
もう少し深い場所までもぐってみようかな・・・海は深い場所へいけばいくほど暗くなっていきます。
ムムム。見たこともない形のタコ発見!ちょっぴり毒々しい色をしているよ?その子はなにか光るものををだっこしています。
さて... このふしぎなタコさん、どんな色の宝石をもっているのかな?
これは・・・むずかしかったかな? むらさき!
ピューラはタコに声をかけました「こんにちは」…。しかしタコはじっとこちらを見たまんま黙っているよ...どうしよう。
あのむらさきの宝石がほしいわ。
のそ~・・・ タコが近づいてきました。ピューラはちょっぴりこわかったけど、勇気を出し、タコがなにか言ってくれないか待ってみました。
「きみ、この宝石がほしいのかい?」タコがピューラに声をかけてきました!
「ええ、ええ、そうよ!くれるの?・・・」
タコはこう答えました。「オイラのなぞなぞに答えられたら、プレゼントするよ。」ゴクリ。きんちょうしてつばを飲み込むピューラ。「わかったわ!」
「じゃあいくよ・・・」タコの足は吸盤だらけでちょっとおもしろい。
「さあ!なぞなぞだ。『しりとりができない朝ってな~んだ』!?」・・・。む、むずかしい。ピューラはうでぐみをして考えこんでいます。
みなさん・・・わかりますか?
ピューラにおしえてあげて!
(しりとりは・・・『ん』が付いたら終わってしまいできなくなるから…たぶん『ん』が最後に付くことばだわ。・・・えーと、えー・・・とぉ) !!わかったっ
ピューラはニッコリして大きな声で言いました「おか『あさ』ん!」つづけてすぐに言いました「あ、おば『あさ』ん」もそうね!?」
タコはわっはっはとごうかいに笑い「だいせいかいっ」と言ってくれました。
そうしてノソ、ノソ、ッと近づいてきて、はい♪とだっこしていたむらさきの宝石をくれました。
「ありがとう!・・・またね~」
スーっとピューラは海の上のほうへ上がっていきます。
いま、あか・みどり・金色・むらさきと4つの宝物、宝石が集まっています。あと3つだわ~。
だいすきな海は気持ちいいけれど、努力するってがんばるって楽しいけれど、くたびれるわ... そんなときは休憩きゅうけい!
ピューラはいつもの丸っこい岩の椅子に腰かけています。
桜貝を時々さわりながら、いとしいマーマン・プッピーの横顔を想いうかべています。もの静かなプッピー。
いつも夢中になって絵をかいたり、貝がらでアクセサリーを作ったりしている。わたしもいっしょに作ってみたいな。
空を見るともうオレンジ色と藍色にわかれそうになっている。夕ぐれです。あ!オレンジと藍色のちょうど境い目から
なにかがおちてきました・・・キラキラとして海の色に似ています。どうやら宝石みたい。
さて、これはなにいろでしょう?
そうだよ!あおいろ。青い宝石をひろいに砂浜へといそぐピューラ。
「ワー!ラッキー!やったーやったー!」幸せいっぱいの声をあげるピューラ。
あまりにも嬉しいのでピューラは歌を歌い始めました。それはピューラがうんと小さなころから唄っているお気に入りの曲です。
♪そうして~朝がきたー。海の向こうになにがあるの~ 朝陽ぃ~は なにをおしえてくれる~ きぃっとそれは~ 愛というものー♪・・・
そうよ、みんなもピューラといっしょに、すきに唄ってみてね!表現はハッピーなら自由で良いんだよ!
歌は朝の歌だったけど、お空にはお月様がのぼってきましたよ。チカチカ・・・チカチカ…♪と、やわらかくきらめく声でお空からも歌声がきこえてきました。
もう一度空を見上げるピューラ。あ!お星さまがい~っぱい!ふりそそぐようです。その中のお星さまが
ヒューッと流れ星になりおちてきたよ。砂浜のむこうで小さく輝いています。
もうみんな、わかっちゃったよね?! ン、わかんない?それはね・・・
きいろの宝石!きいろの宝石ゲットだよ、ピューラ。
こんなにはやく宝物が見つかっちゃうなんて、夢のようだわ。
ふわぁ~・・・あくびがでてきちゃった。もうねましょ。
ピューラは砂浜のそばにある、マングローブの木の根元にふかふかの葉っぱをしきつめたせんようベッドで眠りました。
その夜ピューラは、なんだかふしぎな夢を見ました。
これは夢のお話・・・そこにいるのはなんと、大好きな男の子のマーマン・プッピーです!
プッピーとピューラが浜辺で肩をならべ仲良くおしゃべりをしています。
すこしふたりが黙ったあとに、プッピーが「ピューラちゃん、これをあげるよ。手を出してごらん。」と言います。
言われたとおりにりょうてをさし出すピューラ。(なにかしら・・・)なんだかドキドキします。
すると、空の雲のようにきれいな真っ白の宝石を手にのせてくれたプッピー。「プレゼントだよ」
・・・プッピーはちょっぴり恥ずかしそうにもじもじしています。ピューラも、だいすきなプッピーからプレゼントがもらえるなんて!と顔を真っ赤にしました。
・・・と、そこで目が覚めげんじつの世界に引きもどされたピューラ。
ン?・・・ ピューラはなにかいへんを感じ自分の右手を見ました。ギュッとなにかをにぎりしめています。
そー・・・っとひらいてみました。そこには!
さあ・・・なにがあったのかな? わかりますか?これがわかったらすごい!わからなくても、あなたにもうれしいことが起こりそうよ?
そこには、夢の中でプッピーがプレゼントしてくれたじゅんぱくの宝石があったのです。ピューラのてのひらにのっていたのです。
これで宝探しはぜんぶできました。あとは・・・わたしの髪の毛の長さのきょりをおいて、砂浜に1つずつうめるんだったわ...
あか・・・みどり… ふ~砂を掘るのもひとくろう、でも負けないわ。わたしはプッピーの恋人になりたいの。
金色・・・ そしてむらさき。次々にいどうしつつたいせつに宝石をうめてゆくピューラ。
あお・・・きいろ。そして最後は・・・ プッピーがわたしに夢の中で贈り物してくれた白い宝石!
できたわ。おまじない。
マーメイド・ピューラは丸っこい椅子の上でいま、ロマンチックな気分で澄んだ空と、透明で青い海をながめています。
そこへ、マーマン・プッピーがやってきました。
ハ!息をのむピューラ。すきだからドキドキが止まりません。
プッピーはなんだかあわてているようです。こちらへ向かってきます「ピューラちゃーん!」
あわてているけどおだやかな表情です。「プッピーくん、こんにちは... どうしたの?そんなにあわてて」
「あのね、ピューラちゃん、ゆうべさ、夢にピューラちゃんが出てきたの!」(え!?)びっくりするピューラ。
「あ、あたしもよ!夢でプッピーくんを見たわ」
「え!そうなのかい!?・・・ぼくはね、ピューラちゃんに白い宝石を贈ったんだよ」ますますおどろき!
こんなことがあるんですね。
そのときです。「お幸せにね」小さな小さなメロディーのようなささやきがピューラの耳もとに届きました。あの海の妖精の声でした。
ぼーっとするピューラに「どうしたんだい?ピューラちゃん」と声をかけるプッピー。ピューラはニコッと笑顔。
「ううん、なんでもない!・・・ただ~、わたしの夢でも同じことが起こったわ」と話した。するとプッピーもびっくり。
「おいで!」プッピーはやさしくピューラの手をとった。「空中にどうやって絵を描くのかおしえてあげるよ!」
目を丸くするピューラ「わたしにもできるの?!」「うん」ほんの少しほこらしげな顔をするプッピー。
「未来をただ、夢見るだけさ・・・そうすれば、空中に素敵な絵が浮かび上がってくるんだよ。絵の具はふつうのえのぐを使っているよ。」
言われるがまま、ピューラは絵の具でカラフルになったパレットを手にふでをふった。空に向かって。
(プッピーくんがすき!)と念じた。
すると・・・あら!!! お空に大きくプッピーとピューラの姿。
100点満点のスマイルでふたりは手を繋いでいるよ!
さいごになぞなぞ・・・ ではなく、あなたへのしつもん。
あなたはの夢はなにかな? ...それ、きっとかなうよー
ピューラがほしょうします。

