ダイヤモンド
深夜も回って午前1時すぎ…連絡が入った。

12時というのに呼び出しに取り掛かる夫を見て「もう行くの?」と言っていたのを今でも覚えてる。

映画のチケットを持っていたように思った。怖かったと言っていたらどのような結末になっていたかなんて知らない。

「はーい。カット」というプロデューサーの声で目を覚ました午後9時。

「もう夜?あれ…お酒って」と思ったら、元カレが「お前何やって」という目で見たことにしておいたが、「うーん、いい女だな」やら何か楽しげな夢でも見てるような甘い声でこう呟いた。

「付き合おうっか」と…。

「なにあれ」と、思わず言っていた。

「午後9時、2時過ぎまでよく覚えてる」

と、言ってみた。

問診にて。

「お嬢さん、聞こえますか?ここ、精神科ですよ」と、言われた。

おかしい

「彼氏…は?」と、たかゆきのことを指し示した言葉だった。

しかしながら精神科の医師は、「このような場所で困ります」と、抵抗をしていた。

『すれ違い間際』の出来事だった。

「どうもすみません」

久々の会話だった。

「元カレー」と、騒いでみた!

あいつは、困ったかもしれない。

私とは、別の事務所だし、後輩だしってことになってるけど、今は、別れたプロデューサーってことかしら?と、話を合わせといた。

彼は、木村てつやだ。一応芸名。だって…知ってたもん…本名。

幼馴染で地元では有名なダンサーだった。

一緒に組んでた時もあったし、大会にも出たし、チャンピオンにもなった。世界の。

でも…記憶を失ったの。

“木村てつや”

私と同じ名字だと思ったのは、確かで…。

でも作ってたドラマのプロデューサーが適当に考えたとされる名前で…

そのこと知ってるってこと?

と思った瞬間だった。

交わしていたキスは、温かく、とろけるようだった。

それは…

もう夢中だった。

一際目立つあなたに恋をしていた。
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