黒兎の相棒は総長でも止められない

始まりの火種

数日後――

夕方。

私は由梨と沙耶と一緒に駅前のカフェで課題のプリントを広げてた。

 

「……ねぇ、七星。そろそろ帰んない?」

 

「うん。私もそろそろ送迎頼まれてるし」

 

今日も凪くんが迎えに来る予定になってた。

けど、その時。

カフェの外から、どこかピリッとした空気が流れ込んできた。

 

「……?」

 

ガラス越しに見えたのは、黒い服を着た男たち。
二手、三手――知らない人たちが駅前ロータリーにじわじわ集まってきてる。

 

(……これ、普通の人たちじゃない)

 

私の胸がざわっと嫌な予感でいっぱいになった。

 

その直後。

スマホが振動した。

 

《凪》

【今どこ?】

 

私は急いで返す。

【カフェの中。駅前だけど…なんか変な人たちいる】

 

送信した直後、すぐに既読がついた。

 

【動くな。今すぐ行く】

 

 

***

 

その頃――

駅前のロータリーの反対側。

黒兎のメンバーたちが、既に周囲を警戒しながら配置を取り始めていた。

 

兄は短く無線に指示を飛ばしてた。

「絶対に七星には手出させんな。全員配置急げ」

 

凪はそのまま車を急発進させ、駅前の裏道を抜けながら小さく舌打ちする。

 

「……ったく、面倒な時に動きやがって」

 
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