婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
ああ、やはりこの方は――真に義に厚く、心の温かい方なのだ。

「そうだったのですね……」

私は思わず、失礼を承知でベンジャミン王の手を取った。

「国王になられたというのに、何のお祝いの品も差し上げられなかった私を……まだ友だと言ってくださるのですね?」

「当たり前だ。一度、友になった者との友情は、決して薄れぬ。」

彼の手は、まるで春の日差しのように温かかった。

そのぬくもりが、冷え切っていた私の心にじんわりと染み込んでいく。

私のために、そこまでしてくれたこの人の誠意を、私は一生忘れないだろう――。

「しかしベンジャミン王。私はこの通り、幽閉の身ではありません。」

「そうみたいだな。」

「我が夫になる騎士団長グレイブが、助け出してくれたのです。」
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