婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
グレイブは相変わらずだった。婚約破棄の報せが広まってからというもの、毎晩のように私の部屋の窓の外に現れる。

「おい、アーリン。いっそ俺にしとけ」

低い声でささやくグレイブの姿は、まるで影の守護者のようだった。

最初はただの幼馴染のからかいだと思っていた。

けれど、彼の言葉にはどこか真剣さが混じっている。

「俺ならおまえを心から大事にするって、忘れてないだろ?」

私の心は揺れた。幼い頃からずっとそばにいてくれた彼が、こんな言葉を口にするなんて――。

でも、正直なところ、まだその気にはなれなかった。

「いつかあなたがもっとかっこよくなったらね」

私は嫌味を込めて返す。それは彼に対する遠慮ではなく、私自身を守るための壁だった。

グレイブは肩をすくめて笑った。

「その日を楽しみに待ってるよ」

その何気ない一言が、妙に励みになる。

彼の存在が、私にとっての癒しの時間になっていた。


夜の静けさの中で、窓越しに交わす言葉。

幼馴染以上の何かを感じながらも、まだ踏み出せずにいる私。

けれど、グレイブがいてくれることで、少しずつ前を向ける気がした。

彼の温かさに触れながら、私は新しい自分を見つけ始めているのかもしれない。

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