婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
父の笑みが、やけに誇らしげだった。
「お似合いの二人だな。」
その一言が、部屋に重く響く。
まるでその場で、私の未来が決定されたかのような口ぶりだった。
私は、思わず手の中のグラスを握りしめた。
会話の中身など、もはや上の空だったが、適当な相槌を打っていた私を見て、父は満足げにうなずいていた。
ああ、なるほど。やはり父はグレイブよりも、ベンジャミン王子との結婚を望んでいるのだ。
そしてそれを察してか、王子はすっと席を立ち、私の正面に歩み寄ってきた。
「次に会うときは――結婚式かな?」
冗談めいた口調で言いながら、私の手を取ろうとする。
「……お急ぎですね、王子。」
私はあえて少し笑ってみせる。だが、その笑みの下にあるのは、確かな拒絶だった。
「私はまだ、“結婚する”とは申し上げていません。」
そうきっぱりと告げると、王子の眉が僅かに上がった。
だがその目には怒りでも戸惑いでもなく、まるで駆け引きを楽しむ狩人のような光が宿っていた。
「君のその唇から、“ベンジャミン王子と結婚したい”という言葉を聞けるまで、私は決して諦めないよ」
そしてそのまま、彼は一歩、また一歩と近づいてきた。距離が縮まり、私の鼻先に、彼の吐息が触れそうになる。
「――ぜひその唇から、私と結婚したいと言わせたいな」
その言葉とともに、彼の顔がぐっと近づく。
私はとっさに椅子から立ち上がった。柔らかくも確かな拒絶の意志を込めて。
「王子。あまり軽々しく距離を詰めるのは、礼儀を欠く行為かと存じます」
「お似合いの二人だな。」
その一言が、部屋に重く響く。
まるでその場で、私の未来が決定されたかのような口ぶりだった。
私は、思わず手の中のグラスを握りしめた。
会話の中身など、もはや上の空だったが、適当な相槌を打っていた私を見て、父は満足げにうなずいていた。
ああ、なるほど。やはり父はグレイブよりも、ベンジャミン王子との結婚を望んでいるのだ。
そしてそれを察してか、王子はすっと席を立ち、私の正面に歩み寄ってきた。
「次に会うときは――結婚式かな?」
冗談めいた口調で言いながら、私の手を取ろうとする。
「……お急ぎですね、王子。」
私はあえて少し笑ってみせる。だが、その笑みの下にあるのは、確かな拒絶だった。
「私はまだ、“結婚する”とは申し上げていません。」
そうきっぱりと告げると、王子の眉が僅かに上がった。
だがその目には怒りでも戸惑いでもなく、まるで駆け引きを楽しむ狩人のような光が宿っていた。
「君のその唇から、“ベンジャミン王子と結婚したい”という言葉を聞けるまで、私は決して諦めないよ」
そしてそのまま、彼は一歩、また一歩と近づいてきた。距離が縮まり、私の鼻先に、彼の吐息が触れそうになる。
「――ぜひその唇から、私と結婚したいと言わせたいな」
その言葉とともに、彼の顔がぐっと近づく。
私はとっさに椅子から立ち上がった。柔らかくも確かな拒絶の意志を込めて。
「王子。あまり軽々しく距離を詰めるのは、礼儀を欠く行為かと存じます」