婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
私の声は震えていなかった。

グレイブの前では、こんな強気な言葉は言えなかったのに。

ベンジャミン王子の軽薄な色気と、父の押し付けが交差する今、私はなぜか冷静だった。

ベンジャミンは少し驚いたように目を見開き、それからまた笑った。

「なるほど。そういう強いところも君の魅力だ。ますます気に入ったよ」


私は何も言わず、その場を離れた。

背後で父が「アーリン!」と呼ぶ声が聞こえたが、応じる気にはなれなかった。

また、自分の意思とは関係のない婚約を迫られている。

誰かの都合で、誰かの思惑で。


でも、もう私はあのときのように黙って受け入れたりはしない。

心の中に、グレイブの言葉が蘇る――「俺は、アーリンだけにこの想いを伝えるよ」

私は唇を噛みしめながら、静かに階段を下りた。

私は誰の飾りでも、政治の駒でもない。

私は――私の心で、私の未来を選ぶ。

< 25 / 125 >

この作品をシェア

pagetop