婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
その日、私は部屋に戻るとベッドにうつ伏せて泣いた。

「どうして……」

声にならない嗚咽が、何度も喉から漏れる。

夢見た結婚とはこんなものだっただろうか? 

誰かの思惑に振り回され、心のない誓いの言葉を述べさせられ、永遠を誓わされる。



自由も、愛も、もう私には残されていないのだろうか。

まるで――

「まるで、人形じゃない……」


笑うことも、泣くことも、嫌だと叫ぶことすら許されない。

ただそこにいればいい。

王家の肖像画に似合う妃として、美しく着飾って、黙って隣に立っていれば。


こんなの、人生じゃない。

グレイブの言葉が頭をよぎる。

「俺は、アーリンだけにこの想いを伝えるよ」

彼が夜に囁いたその声が、今は遠くに感じた。

あの夜のぬくもりも、優しい腕も。――もう二度と戻れないのだろうか。


私は両手で顔を覆い、ただ声もなく泣いた。

逃げ道は、どこにもなかった。
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