婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
夜の風が静かにカーテンを揺らしていた。

眠れぬまま、私はグレイブの元へと足を運んだ。

もう会えなくなる前に――彼に、きちんと別れを告げなければならなかった。


月明かりの下、いつものように城壁のそばで待っていたグレイブは、私の姿を見ると、ゆっくりと立ち上がった。

「来てくれたんだな。」

その声に、私は堪えていた涙をこぼす。

「グレイブ……私、結婚するの。もう逃げられないの。」

グレイブの表情は揺れなかった。

ただ、少しだけ目を細めて、穏やかに言った。

「おめでとう、アーリン」


――おめでとう。

その言葉が、何よりも胸に刺さった。彼の心が、自分から完全に離れてしまったような気がして。


「どうして……あなたは……そんなに優しくできるの……? 本当は結婚なんてしたくないの。ベンジャミン王子がどれだけ高貴でも、私の心は、あなただけなのに……」

私はグレイブの胸にすがりついた。

もう、誰にも届かないような小さな声で呟く。

「どこか遠くに行ってしまいたい。あなたと……二人で……」

その言葉に、グレイブの腕がそっとアーリンの肩を抱いた。彼の声は、まっすぐで強かった。
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