婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
遠く鐘の音が響く。
アーリンは純白のドレスに身を包み、静かに馬車の揺れに身を任せていた。
たどり着いたのは、隣国の壮麗な王宮。重たく装飾された扉の先に、彼女の運命が待っている――はずだった。
「グレイブは……来る」
何度も心の中で繰り返す。胸の奥で、小さな希望の炎を灯して。
式場に入ると、賓客たちの視線が彼女に集まった。
王族、貴族、誰もが整った笑顔で「祝福」を注いでくる。
その中央、王冠をかすかに傾けて立つベンジャミン王子がいた。相変わらず冷静で、隙のない立ち姿。
――グレイブ、早く。
アーリンの心は逸っていた。
今、扉が開いて、彼が現れる。
そんな奇跡があるはずだと信じていた。
だが、誓いの言葉が近づくにつれ、時間は残酷に進んでいく。
神官の声が、静寂を切り裂く。
「それでは、新郎新婦の誓いの言葉を。アーリン・ワイズ、あなたはベンジャミン王子を夫とし、生涯変わらぬ愛を誓いますか?」
アーリンの視界がかすむ。
会場は静まり返り、誰もが彼女の返事を待っていた。
ベンジャミン王子が小さく微笑み、耳元で囁く。
「……もう私との結婚生活を想って胸がいっぱいなのだね。安心して。君を幸せにする」
その声音はやさしく聞こえながらも、底に冷たい確信を滲ませていた。
彼は自信に満ちていた。逃げ場などないと理解している男の顔。
その瞬間、アーリンの背筋が凍る。
――違う。私はこんな形で誰かの妻になりたかったんじゃない。
「……誓いますか?」
再び神官の声。
その言葉が、ナイフのようにアーリンの胸をえぐる。
――グレイブ、お願い……来て。
一秒が永遠のように流れる。
指先が震え、唇が開きかけて――
アーリンは純白のドレスに身を包み、静かに馬車の揺れに身を任せていた。
たどり着いたのは、隣国の壮麗な王宮。重たく装飾された扉の先に、彼女の運命が待っている――はずだった。
「グレイブは……来る」
何度も心の中で繰り返す。胸の奥で、小さな希望の炎を灯して。
式場に入ると、賓客たちの視線が彼女に集まった。
王族、貴族、誰もが整った笑顔で「祝福」を注いでくる。
その中央、王冠をかすかに傾けて立つベンジャミン王子がいた。相変わらず冷静で、隙のない立ち姿。
――グレイブ、早く。
アーリンの心は逸っていた。
今、扉が開いて、彼が現れる。
そんな奇跡があるはずだと信じていた。
だが、誓いの言葉が近づくにつれ、時間は残酷に進んでいく。
神官の声が、静寂を切り裂く。
「それでは、新郎新婦の誓いの言葉を。アーリン・ワイズ、あなたはベンジャミン王子を夫とし、生涯変わらぬ愛を誓いますか?」
アーリンの視界がかすむ。
会場は静まり返り、誰もが彼女の返事を待っていた。
ベンジャミン王子が小さく微笑み、耳元で囁く。
「……もう私との結婚生活を想って胸がいっぱいなのだね。安心して。君を幸せにする」
その声音はやさしく聞こえながらも、底に冷たい確信を滲ませていた。
彼は自信に満ちていた。逃げ場などないと理解している男の顔。
その瞬間、アーリンの背筋が凍る。
――違う。私はこんな形で誰かの妻になりたかったんじゃない。
「……誓いますか?」
再び神官の声。
その言葉が、ナイフのようにアーリンの胸をえぐる。
――グレイブ、お願い……来て。
一秒が永遠のように流れる。
指先が震え、唇が開きかけて――