婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
その時、遠くから聞こえたのは、鋭く裂ける風の音。

「待った!!」

高らかな男の声が、静寂を破った。

会場がざわつく。扉が――勢いよく開かれる。

光の中、砂塵を巻き上げて現れたのは、漆黒の騎士服に身を包んだ一人の男。

剣を腰に携え、真っ直ぐな瞳で私を見つめていた。


「……グレイブ」

私の頬を涙が伝った。

「アーリンを返してもらう。」

そう言ってグレイブは祭壇の前に進み出た。

その眼差しには一点の迷いもなかった。


会場にいた誰もが言葉を失い、ただ彼の姿を見つめていた。

だが、静寂を破ったのは、ベンジャミン王子だった。


「やすやすと妻を渡すものか!」

鋭い声と共に、腰の剣を抜く。

その光は、まるで王族の誇りそのもの。


「護衛を呼べ!」

誰かが叫んだが、ベンジャミンは手で制した。

「この男は俺が倒す。」

空気が張り詰め、ついに二人の剣がぶつかり合う。

金属音が響き、会場の装飾が震える。

一撃、一撃が重く、鋭く、ただの剣戟ではなかった。
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