婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
そんな日々の中、国では異変が起き始めていた。

各地の畑で、土が黒ずみ、作物が育たなくなる現象が多発しているという。


「また、畑が全滅だ……」

「これじゃあ、冬を越せない……」

農民たちの声が、城下に広がっていく。

野菜も果物も、葉がしおれ、実が育たない。

原因は不明。魔物の気配もない。

ただ、空気と土が、どこか重たく濁っている。


「これ……何かがおかしい……」

私はただ、枯れた土に手を触れただけだった。

「お願い。土よ、元に戻って。」

心の奥から祈りを込めた瞬間、信じられないことが起きた。

黒ずみ重たかった土が、まるで浄化されるように澄み、しおれていた野菜が青々と立ち上がったのだ。


「聖女様だ……」

「アーリンは、聖女なのか……!」

人々は私をそう呼び始めた。

私は戸惑いながらも、どこかで納得していた。


――母が語っていた“聖女の血”。それが私の中にも流れているということを。

今になって、その意味がようやくわかった気がした。
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