婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
「ずいぶんと冷たいな、アーリン。」

クリフは静かに言ったが、その瞳には確かな苛立ちが宿っていた。

私は下を向いたまま、何も返せなかった。

あの頃の淡い感情が残っていると、彼は思っていたのだろう。

けれど、今の私はグレイブを愛している。それ以外の何者でもない。


「少しくらいは、俺に未練があると思っていた。」

苦笑混じりに呟く彼の声は、どこか悔しさに満ちていた。

だけど、愛人としてそばに置かれたいわけじゃない。

私は物でも、過去の飾りでもない。


「お前の目は、いつもあいつの方を向いているな。」

その一言に、胸がぎゅっと締め付けられた。

私の気持ちはもうグレイブだけにある――その事実が、クリフを苛立たせている。

優位に立っていたはずの王が、一人の女に拒まれる悔しさを噛み締めているのだ。

そして私は、どれだけ睨まれても、もう気持ちを揺らがせることはなかった。
< 48 / 125 >

この作品をシェア

pagetop