婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
「覚えているか、あの春の日のことを。君が花冠を作って、私の頭に載せてくれた――あの時、私は本当に、君と未来を共にしたいと思ったんだ。」

クリフの声は静かだった。けれど、その中には確かな熱があった。

私たちの幼い日々。確かに、心が通じていた時があったのだと、私も覚えている。


でも――

「その気持ちを覆したのは、あなたでしょう。」

そう言った瞬間、私の胸は少しだけ痛んだ。

だって、私はまだ彼に憎しみよりも、悲しみのほうが勝っているのかもしれないから。

「私はあなたを信じていた。なのに、何も言わずに妹と婚約して、あっさりと私を手放した。」

「立場があったんだ、王家としての責任が――」

「私だって公爵令嬢でした。立場なんて、最初から分かっていた。でもあなたは…私に何も言わず、私を選ばなかった。」

王となった今のクリフに、強い言葉をぶつけるのは怖かった。

でも――これだけは、はっきり伝えなければいけなかった。

「あなたが背を向けたのに、どうして今さら…私の心を確かめようとするのですか。」

彼の視線が揺れた。その沈黙が、何よりの答えだった。
< 47 / 125 >

この作品をシェア

pagetop