婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
「セシリーが私に想いを寄せていたかのように見せていたのは、王妃になり贅沢な暮らしをしたいが為だった。決して私を愛してなどいなかった。」

クリフの言葉には、深い痛みが滲んでいた。

私は何も言えず、ただその苦しみを受け止めた。

「一目惚れなど信じた私が馬鹿だった。立場を失ってもなお、国を守ろうとするアーリンこそ、王妃に相応しい。」

その言葉が胸の奥に届いて、じんわりと熱を帯びる。

私は王妃になりたくて国を救おうとしているのではない。

けれど、そう言われることが、こんなにも嬉しく、そして切なかった。

誰だって、一瞬で恋に落ちれば、それを“運命”だと信じたくなる。

クリフもきっと、セシリーとの出会いを、運命だと信じて疑わなかったのだろう。

だからこそ、その幻想が崩れた今、彼の心には深い虚しさだけが残っていた。
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