婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
弱弱しくうなだれるクリフを前に、私はかつての優しい彼を思い出していた。

「どうしたの? 何かあったの?」

気づけば私はそっと彼に近づき、声をかけていた。

するとクリフは、迷いながらも私に手を伸ばした。

その震える指先を、私は思わず握っていた。


「私は……王妃選びを間違えたらしい。」

ぽつりとこぼれた言葉に、私は目を瞬いた。

宝石に身を包み、民の苦しみには目もくれないセシリーの姿が脳裏に浮かぶ。


「それは……贅沢思考のセシリーが嫌になったってこと?」

問いかけると、クリフはふいに私の腕を引き寄せ、胸元に顔をうずめてきた。

「それだけじゃない。セシリーは……私のことを、愛していないんだ。」

私は息を呑んだ。

あれほど愛し合っていたように見えた二人の間に、そんな溝があるなんて。

私には、思いもよらない事実だった。
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