婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
かつて愛し合い、未来を誓った日々はもう遠い過去のものになってしまったのだと痛感する。

こんなにも近くにいるのに、私たちの間には見えない壁が立ちはだかっている。

私の心はその壁の向こうで、深く、切なく震えていた。


「アーリン……」

クリフの囁きに振り返ることもできず、ただ静かに涙がこぼれ落ちた。

今はまだ、誰にも助けを求める力も、抗う勇気も残っていない。

けれど、どこかで小さな灯火が消えずにいることを、私は信じたかった。

いつか、この暗闇から抜け出せる日が来ると——

そんな淡い希望を抱きながら、私はクリフの腕の中で震えていた。

「国王。」

使用人の声が低く、静かに部屋に響いた。

クリフは私から離れ、ゆっくりと立ち上がる。
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