婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
「待て!」
扉の向こうから響いたクリフの声に、私はビクリと肩を震わせた。

「ここは国王の自室だぞ。国王と王妃しか入れない!」

グレイブ……彼の前に、クリフが立ちはだかっている。

でも、グレイブは臆することなく言い放った。

「国王。あなたは、本当の自分を見失っている。」

その言葉に、クリフの身体がわずかに揺れた。

「何を言う!」

「かつての婚約者でも、こんなことをしていいはずがない!」

グレイブの真っ直ぐな声に、私は思わず涙がこぼれそうになった。

ああ、誰かが、正しく怒ってくれている。私のために。


「私は国王だ!自分の愛する人を傍に置いて、何が悪い!」

クリフの叫びはどこか必死で、哀れにさえ聞こえた。

でも、私はもう、戻れない。あの愛しい記憶には。

助けて、グレイブ――。

私は、あなたの声だけを頼りに、この暗闇を抜け出したい。
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