婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
グレイブの腕の中で、私はようやく安堵の息をついた。熱い鼓動と逞しい腕のぬくもりに包まれて、現実感が少しずつ戻ってくる。

「アーリン、もう大丈夫だ。」

その声は、夢に見た声。何度も求め、でも届かなかった――けれど今、確かに私の傍にある。

だが、背後から怒号が飛ぶ。

「待てええっ!」

クリフだった。荒々しく足音を響かせ、私たちを追ってくる。

「国王の自室に入った者は、死刑だぞ!」

その言葉に、私は震えそうになる。でも――

「……お好きなようにどうぞ。」

グレイブが静かに振り返り、冷たい眼差しでクリフを見据えた。強い背中が、私を守ってくれる。

もう、迷わない。私は、この人と共に歩いていく。

心の奥底で、何かが確かに決意に変わっていた。

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