婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
「騎士団長、お覚悟を……!」

鋭い声と共に、護衛たちが一斉に剣を抜いた。

グレイブは私をゆっくりと廊下にあるソファーへと運び、優しく背もたれに預けた。


「グレイブ……!」

私は手を伸ばしたが、彼は微笑んで首を振った。

「大丈夫だ。事情が分かれば、すぐに帰れる。」

そんな風に穏やかに言えるのは、彼が真実を信じているからだろう。

彼の瞳はまっすぐで、微塵の迷いもなかった。

そして、グレイブは護衛たちの前に立ちふさがる。

黒い制服を着た彼らは、普段なら王都の守りを任される精鋭たち――だが今、彼らの額には汗が浮かび、指先がわずかに震えているのが見えた。

「どうした?捕まえるんだろ?」

低く挑むような声に、護衛たちは一瞬たじろぐ。

その背中が、誰よりも強く、頼もしい。私はもう、逃げなくていいのだと心の奥で確信した。
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