婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
グレイブの背中を追っても、誰一人として歩みを止めてはくれなかった。

縄で縛られ、両脇を護衛に挟まれながらも、彼の姿勢は崩れず、毅然としていた。


「グレイブ、死刑なんて――嘘よ! そんなこと、クリフがするはずないわ!」

私の声は、震えながらも必死だった。

どうにか彼の足を止めたくて、心がちぎれそうだった。

すると、グレイブは歩きながら、ゆっくりと首を少しだけこちらに向けた。

「大丈夫だ、アーリン。国王は分かってくださる。」

その声に、私は胸を打たれた。

ああ、この人は本当に、クリフを信じているのだ。

騎士として、男として、どれほど国王と向き合い、剣を交えてきたのだろう。

彼とクリフの間には、私の知らない信頼が確かにある。


「……でも、怖いの。あなたがいなくなるのが。」

思わず漏れた私の小さな声に、グレイブは目だけで優しく微笑んだ。

「心配するな。必ず戻る。」

その言葉が、心の奥にあたたかく響いた。私はただ、祈るように彼の背中を見つめ続けた。
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