婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
「……もういい。」

低く絞り出すような声とともに、クリフは私の肩に上着を掛けた。

そして、何も言わずに背を向け、静かに部屋を出て行った。


助かったの? グレイブの命……。

全身がまだ震えていた。

でも、あの人の命が救われたのなら、どんなに自分が壊れても構わなかった。

けれど確かめたい――この目で、この耳で。

私は震える指で服を整えると、思わず立ち上がり、扉へ向かって駆け出した。


「クリフ!」

廊下の先、歩みを止めずに進む後ろ姿が見えた。

足元がふらつく。まだ恐怖が完全には抜けきっていない。

それでも、私は力を振り絞った。

「グレイブは……生きているの?」

声が裏返る。けれど、彼は立ち止まり、振り返らずに一言だけ呟いた。

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