【シナリオ】恋も未来も、今はまだ練習中。

第12話 私たち、付き合ってます(仮)?





 

○大学キャンパス・昼休み/平日

 食堂前の芝生の広場。春の陽射しが降りそそぐ。

 汐梨は、ピンク色のレジャーシートを敷いて、お弁当を開いていた。
 ミニトマト、玉子焼き、ハート型にカットされたウインナー――。

 そこへ、美哉が紙袋を片手に近づいてくる。

美哉「お、デート弁当って感じじゃん」

汐梨「ち、違います! いつも作ってるだけですっ」

美哉「はいはい。じゃあ、これは差し入れ。コンビニスイーツのティラミスね」

汐梨(……先輩、さりげなく甘やかしてくるなぁ……)

 二人は並んで芝生に腰を下ろす。
 でも、手がふれそうになって、汐梨は思わず引っこめてしまう。

美哉「そういえばさ、昨日のあれ……」

汐梨「え?」

美哉「キスのこと」

 汐梨は、耳まで真っ赤になってうつむく。

汐梨「……あれは、夢だったってことにしておいてください……」

美哉「じゃあさ、現実にするために、もう一回しとく?」

汐梨「~~~~っ、無理ですっ」

 思わずお弁当箱で顔を隠してしまう汐梨。

 そんな彼女を、美哉はただ、くすっと笑って見つめていた。



○サークル部室・夕方

 オペレッタ研究部では、次の演目に向けての話し合いが行われていた。
 が、部員たちはすでに何かを“察している”様子で――

女子部員「最近、汐梨ちゃんと美哉くん、なんかいい感じだよね?」

男子部員「え、付き合ってんの? まだ“仮”とか?」

榛名「どっちでもいいけど、部内恋愛禁止ではないのでご自由に~」

汐梨「ま、待ってください! そ、そんな……っ」

 焦る汐梨を、美哉がさらっと庇う。

美哉「安心して。ちゃんと責任は取りますよ?」

榛名「うわ、軽い」

汐梨「(……でも、ちょっとだけ嬉しい……)」



○大学構内・放課後/講義棟前

 帰り道。
 夕焼けに照らされて歩くふたり。

汐梨「……先輩」

美哉「ん?」

汐梨「“仮”じゃなくて、ちゃんと……付き合ってます、で、いいですか?」

 静かに、でもまっすぐに伝えた汐梨に、美哉は驚いたように笑った。

美哉「もちろん。……じゃあ、今度は彼女って呼んでもいい?」

汐梨「っ、はい……」

 照れた笑顔が重なって、ふたりの距離がまた一歩、縮まった。




○夜・汐梨の部屋・スマホのやりとり

【From 美哉】
《今日の弁当おいしかった。次は俺が作るね。》

【From 汐梨】
《えっ!? 先輩料理できるんですか?》

【From 美哉】
《できないから、明日教えて? そんで、うち来て》

【From 汐梨】
《ええええええええ!!!!》
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