年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
でも、私はそんなことには慣れていない。
そっと視線を落とし、ぎこちなく笑顔を作りながら、なんとか声を絞り出す。

「ありがとうございます」
そんな私を見ても、鷹野君はなにも言わず、にこりと笑っただけだった。

「いいじゃない、ふたりとも似合ってるわ。さあ行って」
お義母様に半ば強引に押し出されるように、私は挨拶をしてその場をあとにした。

店を出てホテルの広々とした廊下を歩き始めると、鷹野君の足音と私のパンプスの音がカツカツと響く。気まずさを拭いきれない私は、覚悟を決めて口を開く。

「鷹野君、本当にごめんなさい」
廊下の中央で立ち止まり、深く頭を下げる。なにに謝るべきかはっきりとは言えないほど、謝りたいことがたくさんあった。父の態度はもちろん、、こんな茶番に巻き込んでしまったこと、そして私がこの場にいることすら申し訳なく思えた。

「……なにに対して謝ってるんですか?」
鷹野君の低く落ち着いた声が背中越しに聞こえた。恐る恐る顔を上げると、彼がゆっくりと振り返り、私をじっと見ていた。しかしその表情から怒りや不満は見られず、ホッとするものの、どう答えればいいのか言葉が見つからない。

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