年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
それに、父のことも気がかりだ。この縁談を断れば、父がどんなことを言い出すかわからない。下手をすれば、また別の縁談を持ってくる可能性だってある。

それならば、人となりを知っている鷹野くんのほうが、まだ安心できる気がする。けれど、鷹野くんの気持ちもわからないままでは、決めることなどできない。

考えが堂々巡りし、答えの出ないまま時間だけが過ぎていく。そんなとき、ちょうどエレベーターが地下に到着し、ドアが静かに開いた。

そこには、広々とした駐車場が続いていた。ずらりと並ぶ車の中で、ひときわ目を引く外国製の高級SUVが停まっている。
「これ、鷹野君の……? 運転できるんだね」
彼といえば飛行機を操縦している姿ばかり思い浮かぶ。だからこそ、つい間抜けなことを言ってしまい、恥ずかしくなってしまう。

「どうぞ」
彼はさらりと答えながら助手席のドアを開け、私を乗るように促した。

「ありがとう」
男性と二人きりで車に乗るのは初めてで、いくら会社の同僚といはいえ雰囲気の違う彼に落ち着かない。助手席に腰を下ろすと、座り心地の良いレザーシートが身体を包み込み高級感に圧倒される。車内には上品な香りがほんのりと漂っていた。
鷹野君が運転席に乗り込むと、低いエンジン音が静かに響き渡った。

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