年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「あの、鷹野君?!」
「嫌?」
「嫌ってわけじゃないけど、どうしたの?!」
自分の口から「嫌じゃない」と出た瞬間、なにを言っているんだろうと、自分で自分に突っ込みたくなる。しかし、それ以上に驚いてしまってどうしていいかわからない。

それに――。
服の上からは細身に見えていた彼が、こうして抱き寄せられると、思いのほかがっしりとした腕をしていて、妙に『男の人なんだ』と実感してしまう

「家族って、こうやって感謝を表したりするだろ? 母親が子どもを抱きしめたりするのと同じ」
確かに、普通ならそうなのかもしれない。両親に抱きしめられた記憶はほとんどないけれど、この温かい腕の中は、ドキドキすると同時に、不思議と安心できる気がした。

私は、そのまま鷹野君に抱きしめられたまま、動けずにいた。

「これからよろしく。奥様」
そう耳元で囁かれた瞬間、思考が追いつかなくなり、私はただ小さく頷くことしかできなかった。
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