年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
けれど、なにも言わなかったということは、きっと母は私の気持ちを理解していたのだろうし、それでもなにもできなかったことを悔いているのかもしれない――そんなことを思いながら、私はゆっくりと立ち上がった。
「じゃあ、行くね」
静かにそう告げると、母は小さく頷いた。
母の本当の気持ちをすべて知ることはできなかったけれど、それでもこうして少しでも話をすることができたことで、心がわずかに軽くなった気がする。
この先、どんな未来が待っているのかはわからないし、不安がないとは言えない。
それでも、私は私なりに前を向いて生きていこう、そう決意し母の姿を背に、私は新しい生活へ向かって歩き出した。
鷹野君の手配は本当に完璧で、引っ越し業者のほかに、私を送る車まで用意してくれていた。母は玄関先まで見送りには来ず、私はひとりでその車に乗り込む。