年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
冷たく感じていた家だったが、長い年月を過ごした場所には、やはり思い出が染みついている。家の建て直しをしたとはいえ、この土地で私は三十一年間を過ごしてきたのだ。
こんな形で嫁ぐことになるなんて、小さいころの私には想像もできなかった。
「出していいですか?」
運転手さんの穏やかな声に、「お願いします」と小さく答えると、車が静かに動き出した。
私はもう、後ろを振り返ることはしなかった。
車窓から流れる景色をぼんやりと眺めながら、これから始まる新しい生活を思い描こうとする。
けれど、どんなに考えてもその先の自分の姿はうまく想像できず、結局、考えるのを諦めた。