年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
これまでとはまるで違う、南向きの大きな窓がある部屋だった。夏の日差しがまぶしく降り注ぎ、カーテン越しの光が床にやわらかな陰影を落としている。部屋全体が明るく、どこか開放的な雰囲気が漂っていた。
少しだけブラインドを下げると、すでに運ばれていた段ボールを一つずつ開け始める。それほど多くない洋服をクローゼットにしまい、以前はなかった本棚には、持ってきた本を一冊ずつ並べていく。
まだ馴染みのない部屋に、少しずつ自分のものが増えていくことで、新しい生活が始まるのだという実感がゆっくりと湧いてきた。
そんなふうに黙々と作業を進めていたとき、不意にドアがノックされる音が響いた。
「はい!」
思わず返事をしたものの、声が裏返ってしまい、自分でも驚く。途端に恥ずかしさが込み上げ、頬がじんわりと熱くなるのを感じた。
それをごまかすようにドアへ向かい、そっと取っ手に手をかける。深呼吸をひとつ挟み、気持ちを落ち着けてからゆっくりと扉を開けると、そこにはやはり鷹野君が立っていた。
なにと声をかけるべきだろう――。
そう考えていると、彼はにっこりと笑い、自然な口調で「ただいま」 と言った。