年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「でも……」
「でもじゃない」

短く強く言い切られ、そのまっすぐな視線に言葉をのみ込む。
ずっと「役に立て」と言われ続け、「立たなければいないようなものだ」と扱われてきた私は、いつの間にかそれが当たり前になっていたのかもしれない。

"誰かの役に立たなければ、自分には価値がない"――そんな考えが、深く染みついていたのだと、改めて気づく。

鷹野君の言いたいことは、なんとなく理解できた。彼がそう言ってくれるのなら――少しずつでも、自分を認められるようになりたい。

そう思いながら、小さく息を吐き、静かに頷いた。
「あと、望海も鷹野になるんだから、鷹野君はやめて」
確かに、結婚するのだから、私も鷹野望海になるのだ。

「わかった」
そう伝えると、奏多君はきれいに笑った。

キッチンに入り、まずは冷蔵庫を開けて中を確認する。義母が手配してくれた新鮮な食材が、ぎっしりと詰まっていた。

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