年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない


まさか彼がそんなふうに思っているなんて、想像もしなかった。

「そんな……私なんて三十過ぎて、適齢期も過ぎた売れ残りだって、父や沙羅からも――」
つい自虐的な言葉が口をついて出たが、途中で慌てて飲み込む。
「望海」
「ん?」
そんな私に、奏多君は箸を置き、まっすぐに目を向けた。

「俺は望海だから、この結婚をしようと思った。それだけは知っておいて」
――それはどうして? なぜ?
尋ねたかった。でも、答えを聞くのが少し怖くて、私はなにも言えなかった。

それから一か月が経ち、私たちは正式に夫婦になった。
会社ではもともと私の経歴を知る人が少なく、結婚の申請も特に問題なく受理された。

婚姻届は、お互いの休みを合わせて役所へ行き、二人で提出した。
代理人に頼んで出すこともできたけれど、「せっかくだし、二人で行こう」と奏多君が提案してくれたのだ。

とはいえ、書類に名前を書いて提出したからといって、なにかが劇的に変わるわけでもなく、実感が湧くまでには少し時間がかかりそうだと思った。
< 161 / 274 >

この作品をシェア

pagetop