年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「ありがとう……」
そう答えるのが精一杯で、私はワインを口にした。
食後のデザートまで堪能し、最後にコーヒーを飲み終えた私は、奏多君に軽く断りを入れて席を立った。
「ちょっと、化粧室に行ってくるね」
「大丈夫か?」
奏多君がそう言ったのは、先ほどの話を気にしてくれているからだろう。けれど、ここは高級ホテルだ。酔っ払いに絡まれるような心配はない。それに、今日は飲んだけれど、緊張もあったせいか、それほど酔っているわけではなかった。
「大丈夫」
微笑んでそう伝えると、奏多君は少し考えるように私を見たが、結局、それ以上はなにも言わなかった。
案内されて化粧室へ向かい、手を洗おうと洗面台に向かったとき、不意に視界の端に赤い色が映った。
その瞬間、息が詰まる。
「……どうして」
思わず、かすれた声が漏れていた。今までの心臓の高鳴りとは違い、早鐘のようにバクバクと音を立てる。