年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「お父様にお願いして、奏多さんの妻は私にしてもらうわ。さっきの男も、大したことなかったもの」
長い指先をひらりと動かしながら、きれいに整えられた爪に視線を落とす。そして、ゆっくりと私の鎖骨あたりを指でトンと叩いた。
「姉さんよりは、私のほうが彼も喜ぶはず」
「沙羅!! そんなこと……」
許されない。
そう言おうとした私だったが、沙羅はすでに踵を返し、化粧室を出て行ってしまった。
私はただ、その背中を見送るしかなかった。
私たちはうまくやっているし、奏多君も私を大切にしてくれている。でも――もし沙羅が本気になったら、奏多君はどうするのだろう。
あれだけいつも褒めてくれて、ストレートに思いを伝えてくれるのに、沙羅が絡むと私の心はすぐに揺れてしまう。
……情けない。
そんな自分に嫌気がさしつつ、はっと我に返った。奏多君を待たせているし、こんな顔で戻れば余計な心配をかけてしまう。