年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない

「スイートルームならひとつ、ただ、ワンベッドルームしか空いていないようです」
奏多君はその内容を確認し、私の方へと視線を戻す。
「……スイートだけど、ワンベッドルームしか空いてないみたいだ」

一瞬だけ言葉に詰まりそうになりながらも、私は小さく頷き、静かに答えた。
「……私は、構わないよ」

自分の声がわずかに震えているのを自覚しながらも、もう後戻りはできなかった。
彼がどう受け止めたのかはわからない。

けれど、奏多君は特に表情を変えることもなく、静かにスタッフに手配を依頼した。
夫婦なのだから、なにもおかしなことはない。そう思おうとするのに、意識すればするほど落ち着かず、気づけば指先をぎゅっと握りしめていた。
 
自分で言った言葉だったが、その理由は確実に、さっきの沙羅の言葉を気にしたからだ。自分の身勝手な行動に、自己嫌悪に陥りそうになる。

しかし、すぐに支配人が現れ、私たちを最上階の部屋へと案内してくれた。
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