年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない

乗客の悲鳴が聞こえてくるような気がした。いや、実際に聞こえたのかもしれない。そう思わせるほどに、この瞬間は息苦しかった。

誰もが固唾を呑み、滑走路の端で、あるいは空港のどこかで、ただ祈ることしかできない。

そして――。

機体が、大きく揺れながらも、ついに完全に停止した。
「……着陸成功!!」その言葉と同時に、私の体から一気に力が抜ける。

無事だ……!
私の背後で歓声が上がるのがわかった。だが、安心するにはまだ早い。

「救助開始!」
スタッフたちが一斉に動き出し、機体の非常口が次々と開かれる。口元を覆った乗客たちが、混乱しながらもクルーの指示に従い、一人、また一人と外へと歩み出してくる。

泣きながら地面に崩れ落ちる人、何度もCAに感謝を伝える人、安堵の表情を浮かべる家族たち。彼らの姿を見て、少しずつ安堵の気持ちが胸の奥に広がる。

しかし、奏多くんはまだ降りてこない。どうして? 乗客乗務員は全員降りたのに、どうして彼はまだ――。
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