年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
嫌な予感が、じわじわと胸を締めつけていくが、今は目の前に集中しなければ。そう思い、無心で対応を続けた。
落ち着いたそのときだった。私の心は、奏多くんの無事だけを確認したい。機体に視線を向けたときだった。
突然、機体の左翼付近から、炎が立ち上る。
「――火が出た!!」
誰かの叫び声が響いた瞬間、空気が一瞬で張り詰める。
燃料が漏れたのか、白煙が機体の下部からもくもくと上がり始め、オレンジ色の炎が勢いを増していく。
「まだ中に機長が残ってる!!」
その言葉に、さすがに冷静ではいられなくなり、私は窓際まで駆け寄って飛行機を見ようとした。
そのときだった。
さっきは一度現場を離れた父だったが、いてもたってもいられなくなったのか、再び姿を現した。
「なにが『迅速な対応』だ!? どうして燃えているんだ。こんな事態を招いたのは、元をたどれば整備のミスじゃないのか!? なんでランディングギアが降りないなんてことが起こるんだ!!」
その瞬間、整備チームのリーダーが顔をこわばらせる。
「そんな……点検は確実に行いました。それに、ギアのトラブルは予測できない部分もあり――」
「言い訳なんか聞きたくない!! お前らのせいで機体が燃えたらどうする!? 賠償金は誰が払う!? 会社の信用問題だぞ!!」
整備スタッフが唇を噛みしめ、周囲の空気が沈む。誰もが「今、それを言うか?」という目をしていた。