年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「ごめん、忘れて。でもそんな人はいない」
そう答えると、鷹野君はさらに問いかけた。
「じゃあ、やりたいことはありますか?」
「やりたいこと?」
そう問われて、すぐに答えが出てこなかった。
仕事以外で自分の意思でやりたいことなど考えたことがあっただろうか――そう思っても、思い返してみても、なにひとつ浮かんでこない。
ぼんやりと考えながら、私は彼の隣を歩き出す。
「なんだろうな……」
家には家政婦さんがいるけれど、彼女が休みの日はその分の家事を私が引き受ける。
自分の〝やりたい〟を基準に、なにかをしようと思ったことなんて、もしかしたら一度もなかったのかもしれない。