年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
あの時、「機長になったら」とやんわりかわした彼女が、どうして今になってこの見合い話に応じたのだろう。
彼女が了承した理由は、いったいなんなのだろう。俺のことを想ってだとは思えない。
まさか、彼女も俺の家柄や肩書きに、価値を見出したのだろうか。
そう思った瞬間、胸の奥に苦い感情がじわりと広がった。
しかし、それが理由だったとしても、今なららただの〝年下の後輩〟だった俺を、〝男〟として見てもらえるのかもしれない。
そんな希望めいた感情も、同時に湧き上がっていた。昔も今も、御曹司扱いすることなく自然に接してくれる彼女と一緒にいると、本当の自分でいられる気がする。
見合いをすすめてもいいんじゃないか? そんな思いは、彼女の静かなひと言であっけなくかき消された。
「私からは断れない。だから、鷹野君から断ってほしい」
不意に聞こえたその声に、思考がふっと途切れる。反射的に顔を上げて、俺は若林さんをまっすぐに見つめていた。
――断ってほしい、と彼女は言った。
俺が機長になったから見合いを了承した、というわけではなさそうだ。
そのことに、少しだけ安堵を覚える。