年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
妹の沙羅さんは、確かに華やかで美しいとは思う。社交的なタイプで、本音を言えば俺が一番苦手とするタイプだ。しかし、彼女の父親にとっては、それこそが「良し」とされる価値観なのだろう。父の圧力のもと、彼女は自分の意思で決められない。 その声には、そんな諦めが滲んでいた気がした。
そして、その奥には、ほんの微かに悲しみが漂っているように思えた。
でも、俺は彼女の仕事ぶりを知っている。空港での彼女の存在は決して「役に立たない」なんてことはない。むしろ、彼女だからこそできることがたくさんある。後輩からの人望も厚い。それなのに、自分を低く見てしまう彼女。
俺が見合いを断ったら、彼女はまた家での立場を失うかもしれない。そんなことはさせたくない。
――この見合いをすすめませんか?
俺がそう言葉を発しようとしたとき、目の前に泊まっていたタクシーの前後部座席の扉が開いた。