年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
料理は確かに見た目も美しく、味もきっと素晴らしいのだろう。でも、私の口の中ではどこか無味に感じられ、少しずつしか進められない。
「望海は適齢期も過ぎ、私としても心配しておりまして……。結婚して家庭に入れば仕事は辞めさせますし、家のことだけに専念させます。奏多さんのような立派な方に引き取っていただければ、親としても安心です」
父が放ったその言葉を耳にした瞬間、私は手を止め、そっと鷹野家の表情をうかがった。
お母様は確かに、息子である鷹野君の結婚相手を探しているのかもしれない。しかし、これだけの企業を束ねる社長である鷹野君のお父様が、父の浅はかな打算を見抜かないはずがない。
案の定、社長がほんの一瞬だけ表情を歪めたのがわかった。そう思った次の瞬間だった。
「前向きに考えさせていただきます」
「奏多?」
その一言を口にしたのは、他でもない鷹野君だった。
驚いた社長が、彼の名前を呼ぶ。今の父の発言を聞いたうえで、それでも「前向き」と言い切った息子に、戸惑いを隠せないようだった。
それは私も同じだった。
断ってと頼んだのに、どうして? そんな気持ちで彼を見据えた。