年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない

「このたびは、このお話をお受けいただき、ありがとうございます」
父の低姿勢な声に、私は心の中で驚きを隠せなかった。家の中では考えられないほど丁寧な言葉遣いだ。普段の高圧的な態度が、まるで嘘のようだった。

私もそれに続き、正座をしながら頭を下げた。

「本日はお時間をいただき、ありがとうございます。若林望海です。どうぞよろしくお願いいたします」
緊張のせいで喉がカラカラに乾いているのがわかる。座卓の前に深く頭を下げながら、心臓の音が静寂な部屋に響いているような気さえした。

「あら、とってもきれいなお嬢さんね、あなた」
鷹野君のお母様が穏やかな笑みを浮かべながら優しい声をかけてくれたことで、少しだけホッとした。しかし、お父様の反応が読めず、思わず様子をうかがってしまう。

その隣で、鷹野君のお父様が「ああ」と短く返事をしながら、隣に座る鷹野君に視線を向けた。

「母さん、それぐらいにして、まずは挨拶を」
鷹野君が穏やかな声で促すと、お母様は「あら、ごめんなさいね」と、コロコロと鈴の音が鳴るような声で笑った。

母も含めて両家が挨拶を済ませたタイミングで、料理が運ばれてくる。終始、父が社長の機嫌を取ることだけに必死になっている様子が心苦しかったが、母は相変わらず笑みを貼り付けているだけだし、私からなにかを言うこともできなかった。
< 92 / 274 >

この作品をシェア

pagetop