年下敏腕パイロットは想い焦がれた政略妻をこの手で愛して離さない
「私は、奏多さんのお仕事ぶりを拝見し、いつも勉強させていただいております」
ぎこちない笑顔を浮かべている自覚はあった。それでも、少しでも場の空気を和らげなければならないという思いが強かった。

「奏多さんは、いつもお客様を第一に考え、安全を最優先に行動されています。スタッフからも慕われていて……父が言うように、なにもない私にはもったいないご縁すぎます」
精一杯伝えたつもりだったが、わずかに声が震えているのが自分でもわかった。その瞬間、隣に座る父が低い声で私を呼ぶ。

「望海!」
思わず肩が揺れる。

なにを考えているんだ、そう言わんばかりの冷たい視線が突き刺さる。鷹野君やそのご両親の反応を確認する余裕もなく、視線は自然と自分の手元へと落ちた。

しかし、こんな結婚に鷹野君を巻き込むわけにはいかない。
「いや、望海は掃除や料理、礼儀は厳しく育てましたので、その点はご安心ください」
父もまさか、自分の発言が私の断る理由になるとは思っていなかったのだろう。慌てたように、急にフォローするような口調へと変わった。
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