王太子の婚約破棄で逆ところてん式に弾き出された令嬢は腹黒公爵様の掌の上【短編】
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アルベルト公爵は、建国時に剣として活躍した初代国王の王弟の家門だ。
代々の当主も武において天賦の才を持ち、現当主の彼も国一番の剣術使いで更には魔法の腕も最強。国の騎士団の総司令官を担っていた。
軍人としての公爵は、冷徹で好戦的。
年々領土を広げてきている帝国に対して、こちらから戦を仕掛けるべきだと主張する「過激派」として知られていた。
ディアナ伯爵令嬢は、魔法の才に恵まれた。
子供の頃から騎士物語に憧れていた彼女は、両親の反対を押し切って騎士団の魔法隊に入団した。
彼女は騎士団の副司令官であるギュンター侯爵に師事していた。
この副司令官は、総司令官とは正反対の考えを持つ「穏健派」として知られていたのだった。
当然ディアナは師匠の意思を継いでいる。
常に主義主張をはっきりと述べる彼女は、穏健派の急先鋒として度々過激派とぶつかり合っていた。
しかも地位が遥か上のアルベルトにまで噛み付き、彼も毎度売られた喧嘩を買っていたので、軍ではよく二人が言い合いになっている場面をよく目撃されていた。
もっとも、ディアナが噛み付いているだけで、アルベルトのほうは軽くいなしていたのだが。