王太子の婚約破棄で逆ところてん式に弾き出された令嬢は腹黒公爵様の掌の上【短編】
実は、ディアナには敵が多い。
それは主に騎士団の敵対派閥の騎士たちだ。
穏健派の中の過激派みたいな彼女は、彼らからしょっちゅう口撃を受けていた。
実力主義の騎士団は下級貴族や平民も多く、伯爵令嬢かつ王子の婚約者の彼女に対する妬みも含まれていた。
今日は月に一度の騎士団の幹部会議。
第三魔法部隊の副団長である彼女も会議に参加していた。
議題は最近辺境に近い少数民族が国境警備隊と衝突している問題で、過激派は弾圧すべきだと主張をし、ディアナたち穏健派は話し合いを進めるべきだと主張していたのだ。
白熱する中で、過激派騎士たちの期待の視線が総司令官に向く。
普段なら、「さすが世間知らずのご令嬢はお甘い」などと言って一緒になってディアナを攻撃している公爵だ。今回もあの生意気なお嬢様のプライドをへし折ってくれるに違いない。
しかしアルバートの出した答えは、
「今回は背後に隣国の辺境伯が関与しているのは確かだ。よって、辺境伯もろとも討つ。以上だ」
いつもの澄ました顔でそれだけ言って、すぐに具体的な作戦の話に入った。
彼のあっさりした態度には、その場にいる全員――当のディアナまでもが困惑した。
普段なら、伯爵令嬢に嫌味の一言は必ず付け加えるのに……。