キスはボルドーに染めて
 蒼生はさっきまで手元で広げていた資料を、陽菜美に見えるように机に並べると、大きくうなずいた。

「そう、日本ではあまり馴染みがない言葉だが、ヨーロッパでは伝統的な投資法のひとつなんだよ。金や債券と同じようにワインも投資の対象になる」

「ワインがですか?」

 陽菜美は驚いて目を丸くする。

 まさか飲料品であるワインが、投資の対象になるとは思ってもみなかった。


「対象になるのは主に長期熟成に向いている、いわゆる高級ワインといわれるものだ。ただワインは飲み頃があるし、その時の情勢によっては当然値が上がるとは限らない。まぁそれも、コレクターにとっては楽しみの一つって訳だな」

「へぇ、そんな考え方があるんですね」

 陽菜美は目を丸くすると、資料の一部を手に取る。

 そこには名門シャトーの70年前のワインが、有名オークションで、一本8,000万円で落札されたと記載されていた。

 一十百とゼロを数えていた陽菜美は、あまりの額に眩暈(めまい)がしてくる。
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