キスはボルドーに染めて
「すごいですね……。でもこれだと、最初に買う時点で高価すぎるんじゃないですか……?」

 これでは、とても庶民が手を出せるワインではない気がして、陽菜美は怖気(おじけ)づきながら顔を上げた。


「だからこそ、これなんだよ」

 すると蒼生は、待ってましたとばかりに、にんまりと笑っている。

 蒼生が差し出した資料を覗き込んだ陽菜美は、再び大きく首を傾げた。

 そこには“ボルドー・プリムール・ウィーク”と書かれている。


「プリムール……?」

「そう、これはボルドー独自のシステムなんだ。プリムールウィークは毎年四月の初旬に設定されていて、まだ市場に出る前の、木樽で熟成している段階のワインを、他に先駆けて売り出す期間のことをいうんだ」

 ボジョレーヌーボーのように、一年の間に収穫・醸造・瓶詰めまで終えるワインとは違い、いわゆる高級ワインといわれるボルドーのシャトーのワインは、熟成期間が長く、葡萄を収穫してから市場に出るまでに約三年がかかる。
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