キスはボルドーに染めて
 触れ合った指先の温度に反応するように、陽菜美の体温は急激に上昇していくようだ。

 もう陽菜美の全身は、自分でもわかる程に熱く火照(ほて)っていた。


「陽菜美」

 するとじっと陽菜美を見つめていた蒼生が、静かに口を開く。

 胸のドキドキに絡むように注がれる蒼生のやけに熱っぽい視線に、どうしたらいいのかわからなくなった陽菜美は、取り繕うように慌ててパッと手を離した。


「コ、コーヒーでも入れて、乾杯しましょうか?」

 陽菜美は今まで蒼生の指に触れていた右手をぎゅっと胸元で抱きしめると、真っ赤になった頬を隠すように、小走りでサイドボードに向かう。


 ――どうしよう、ドキドキしちゃって、蒼生さんの顔が見られないよ……。


 陽菜美はドギマギとしたまま、ケトルのスイッチを押すと、ぎこちない手つきでコーヒーのフィルターをセットした。

 シーンと静まり返った部屋に、シューシューというお湯の沸く音が響く。

 しばらくして、パチンと音をたてながらケトルのスイッチが切れた。
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